コアパワートレーニングとインテグレーティッドコアトレーニング
コアパワートレーニング
前回は主にグローバル筋の筋肥大を目的としたコアストレングストレーニングについて紹介しました。パフォーマンスの向上を考えると今まで紹介してきたコアトレーニングをさらに発展させる必要があります。
コアトレーニングにおいてもウエイトトレーニングと同様で、実際のスポーツパフォーマンス時の動作スピードとトレーニング時の動作スピードは大きく異なります。スポーツパフォーマンス時では正しく体幹筋群を使用しパワー発揮を行い、より効率的な四肢の動きを実現する事がパフォーマンス向上に不可欠です。経験上多くの方が感じていると思いますが、体幹筋群に特化したエクササイズとスポーツ特異的なエクササイズの間にある動作スピードのギャップを埋める必要があります。そのためには動作スピードが高く負荷のかかった状態で、意識して体幹筋群を使う事、さらにその感覚を身に付ける必要があります。これらを目的とするコアトレーニングがコアパワートレーニングです。
コアパワートレーニングの特徴
コアパワートレーニングは正しく腰椎の安定化を行える事、またその上下の胸椎や股関節の可動性が十分に備わっている事ではじめて実施すべきエクササイズになります。コアパワートレーニングはスポーツパフォーマンス時の動作スピードもしくはそれ以上のスピードで実施する体幹筋群を由来とする爆発的な力発揮を行うトレーニングです。主にメディシンボール(MB)を使って行います。
コアパワートレーニングの方法
使用するMBは3kg程度が良いかと思いますが、選手のレベルに応じて調整してください。
爆発的なコアパワートレーニングを開始する前に必ず行うべき事があります。それは、胸椎の可動性の状態の確認および向上です。Schneiders AGの研究によるとFMS®の1つで水平面と矢状面の腰椎の安定性と胸椎の可動性、体幹と上肢・下肢の複合的な神経筋コーディネーションの評価項目でもあるローテータリースタビリティーテストにおいて、満点である3点は1%であり、90%が何かしらの機能障害(腰椎の安定性不足や胸椎の可動性不足など)を有する事がわかっています。
従って、胸椎の可動性と再度腰椎の安定性が正しく出来ているか確認する必要があります。その方法としては椅子に座った状態で、棒を肩に担いで体幹を側屈と回旋させて、胸椎の可動性が左右対称であるか確認します(FMS®のローテータリースタビリティーテストに側屈を加えたもの)。
コアパワートレーニング初級編
初級編ではMB(またはプレイト)を投げずに、意図的にMBを自在にコントロールし、その際腰椎をしっかり固定し、胸椎をスムーズに爆発的に回旋させる事を目的に行います。
前回は主にグローバル筋の筋肥大を目的としたコアストレングストレーニングについて紹介しました。パフォーマンスの向上を考えると今まで紹介してきたコアトレーニングをさらに発展させる必要があります。
コアトレーニングにおいてもウエイトトレーニングと同様で、実際のスポーツパフォーマンス時の動作スピードとトレーニング時の動作スピードは大きく異なります。スポーツパフォーマンス時では正しく体幹筋群を使用しパワー発揮を行い、より効率的な四肢の動きを実現する事がパフォーマンス向上に不可欠です。経験上多くの方が感じていると思いますが、体幹筋群に特化したエクササイズとスポーツ特異的なエクササイズの間にある動作スピードのギャップを埋める必要があります。そのためには動作スピードが高く負荷のかかった状態で、意識して体幹筋群を使う事、さらにその感覚を身に付ける必要があります。これらを目的とするコアトレーニングがコアパワートレーニングです。
コアパワートレーニングの特徴
コアパワートレーニングは正しく腰椎の安定化を行える事、またその上下の胸椎や股関節の可動性が十分に備わっている事ではじめて実施すべきエクササイズになります。コアパワートレーニングはスポーツパフォーマンス時の動作スピードもしくはそれ以上のスピードで実施する体幹筋群を由来とする爆発的な力発揮を行うトレーニングです。主にメディシンボール(MB)を使って行います。
コアパワートレーニングの方法
使用するMBは3kg程度が良いかと思いますが、選手のレベルに応じて調整してください。
爆発的なコアパワートレーニングを開始する前に必ず行うべき事があります。それは、胸椎の可動性の状態の確認および向上です。Schneiders AGの研究によるとFMS®の1つで水平面と矢状面の腰椎の安定性と胸椎の可動性、体幹と上肢・下肢の複合的な神経筋コーディネーションの評価項目でもあるローテータリースタビリティーテストにおいて、満点である3点は1%であり、90%が何かしらの機能障害(腰椎の安定性不足や胸椎の可動性不足など)を有する事がわかっています。
従って、胸椎の可動性と再度腰椎の安定性が正しく出来ているか確認する必要があります。その方法としては椅子に座った状態で、棒を肩に担いで体幹を側屈と回旋させて、胸椎の可動性が左右対称であるか確認します(FMS®のローテータリースタビリティーテストに側屈を加えたもの)。
コアパワートレーニング初級編
初級編ではMB(またはプレイト)を投げずに、意図的にMBを自在にコントロールし、その際腰椎をしっかり固定し、胸椎をスムーズに爆発的に回旋させる事を目的に行います。
コアパワートレーニング中級編
中級編では体幹筋群を意識的に使い、MBを爆発的に投げます。まずは腹直筋を主なトレーニング対象として屈曲方向のトレーニングを行いましょう。体幹の屈曲方向のエクササイズが正確に行えるようになったら、斜めの動きを加えて腹斜筋群に対するコアパワートレーニングも行いましょう。
中級編では体幹筋群を意識的に使い、MBを爆発的に投げます。まずは腹直筋を主なトレーニング対象として屈曲方向のトレーニングを行いましょう。体幹の屈曲方向のエクササイズが正確に行えるようになったら、斜めの動きを加えて腹斜筋群に対するコアパワートレーニングも行いましょう。
その他の中級編のパワートレーニングとしては、プライオメトリックストレーニングとして一般的なMBを可能な限り後方に投げ飛ばす「MB バックスロー」や壁に向かって体幹を捻りながらMBを爆発的に投げる「MB サイドスロー」も非常に有効なエクササイズとなります。これらのエクササイズを通して、体幹筋群を由来とするパワー発揮の感覚及びスムーズな運動連鎖(力の伝達)の感覚を身に付ける事が大切です。共通した注意点は、他のコアパワートレーニングのエクササイズと同様です。
コアパワートレーニング上級編
難易度が高いコアパワートレーニングにおいても、トレーニング対にする適応が起こってしまいますので、トレーニング強度を変化させる必要があります。方法としてはMBの重さを増す事がありますが、トレーニングスピードが遅くなってしまうとこのトレーニングの目標が得られないので、主に支持基底面を小さくする、つまり片足立ちになる事で難易度を難しくします。スポーツ動作において、両足で均等に荷重している状況は少なく、スポーツ動作に類似する身体の使い方となり、パフォーマンス向上に繋がります。片足 MB スマッシュや片足MB バックスローが良い例となります。
この連載で今まで紹介してきたコアトレーニングついて整理すると、下記のような特徴が挙げられます。
コアスタビリティートレーニングは腰椎の安定化を主な目的とした、より筋持久力に焦点をあてたトレーニングであり、コアストレングストレーニングは筋肥大、そしてコアパワートレーニングは文字通りパワー発揮の効率化および強化を目的としたトレーニングになります。従って、ウエイトトレーニングと同様で反復回数は1~6回程度、セット数は2~5セット程度とすべきです。また、十分なセット間レストをとり、それぞれのセットを爆発的にトレーニングしましょう。
インテグレーティッドコアトレーニング(Integrated Core Training)
通常のフリーウエイトを用いたオープンキネテッィクスチェーン(OKC)のウエイトトレーニング(スクワットやデッドリフトなど)においても、正しいフォームでトレーニングを行うためには、コアの安定性が必要不可欠です。従って、これらのトレーニング種目においても片足立ちでトレーニング(支持基底面を小さくする)したり、身体の中心から負荷までの距離を長くしたり(オーバーヘッドスクワットなど)、負荷を左右不均等にしたりする事で体幹筋群の負荷を増加させ、有効なコアのトレーニング効果が得られます。普通のウエイトトレーニングにこれらの工夫を加えて、意図的に体幹筋群の負荷を増加させて、トレーニングの目的とする事をインテグレーティッドコアトレーニング(Integrated Core Training)と言います。つまり、今まで紹介してきた体幹筋群の強化に焦点を当てたトレーニングとウエイトトレーニングや実際のスポーツ動作の間にあるギャップを埋める事が出来るトレーニングと言えます。
コアパワートレーニング上級編
難易度が高いコアパワートレーニングにおいても、トレーニング対にする適応が起こってしまいますので、トレーニング強度を変化させる必要があります。方法としてはMBの重さを増す事がありますが、トレーニングスピードが遅くなってしまうとこのトレーニングの目標が得られないので、主に支持基底面を小さくする、つまり片足立ちになる事で難易度を難しくします。スポーツ動作において、両足で均等に荷重している状況は少なく、スポーツ動作に類似する身体の使い方となり、パフォーマンス向上に繋がります。片足 MB スマッシュや片足MB バックスローが良い例となります。
この連載で今まで紹介してきたコアトレーニングついて整理すると、下記のような特徴が挙げられます。
コアスタビリティートレーニングは腰椎の安定化を主な目的とした、より筋持久力に焦点をあてたトレーニングであり、コアストレングストレーニングは筋肥大、そしてコアパワートレーニングは文字通りパワー発揮の効率化および強化を目的としたトレーニングになります。従って、ウエイトトレーニングと同様で反復回数は1~6回程度、セット数は2~5セット程度とすべきです。また、十分なセット間レストをとり、それぞれのセットを爆発的にトレーニングしましょう。
インテグレーティッドコアトレーニング(Integrated Core Training)
通常のフリーウエイトを用いたオープンキネテッィクスチェーン(OKC)のウエイトトレーニング(スクワットやデッドリフトなど)においても、正しいフォームでトレーニングを行うためには、コアの安定性が必要不可欠です。従って、これらのトレーニング種目においても片足立ちでトレーニング(支持基底面を小さくする)したり、身体の中心から負荷までの距離を長くしたり(オーバーヘッドスクワットなど)、負荷を左右不均等にしたりする事で体幹筋群の負荷を増加させ、有効なコアのトレーニング効果が得られます。普通のウエイトトレーニングにこれらの工夫を加えて、意図的に体幹筋群の負荷を増加させて、トレーニングの目的とする事をインテグレーティッドコアトレーニング(Integrated Core Training)と言います。つまり、今まで紹介してきた体幹筋群の強化に焦点を当てたトレーニングとウエイトトレーニングや実際のスポーツ動作の間にあるギャップを埋める事が出来るトレーニングと言えます。
「オーバーヘッドスクワット」、「片手オーバーヘッドスクワット」、「片足デッドリフト」、「片手オルタネートダンベルランジ」、「片手スナッチ」や「片手クリーン&ジャーク」などがインテグレーティッドコアトレーニングのエクササイズとなります。
特に片手のオリンピックリフティングのエクササイズである「片手スナッチ」や「片手クリーン&ジャーク」はパワー発揮要素も多く含んでおり、インテグレーティッドコアトレーニングの中でコアパワートレーニングの要素も多く含む種目と言えます。 インテグレーティッドコアトレーニングのプログラム作成について トレーニングプログラムの考え方ですが、一般的なウエイトトレーニングと同様に筋力やパワーの向上を目的とするのであれば反復回数を1~6回程度、筋肥大を目的とするのであれば、反復回数は6~12回程度、筋持久力を目的とするのであれば12回以上の反復回数とするメニュー構成にするべきです。ほとんどの種目が体幹筋群により負荷をかける目的でバイラテラル(片側負荷)のエクササイズになるかと思います。同時に行う他の種目にもよりますが、インテグレーティッドコアトレーニングとして紹介したエクササイズを行う場合、左右合計で上記の反復回数を目的に応じて選択し、セット数は2~4セット程度が妥当だと思います。セット間のレストについても、他のウエイトトレーニングと同様と考えます。従って、パワー発揮が目的である場合は3分程度、筋力向上が目的であれば1~5分程度、筋肥大なら30~60秒、筋持久力を鍛えるなら30秒程度のセット間レストとします。 すべてのコアトレーニングに関する注意点 コアトレーニングや自重のトレーニングは毎日行っても良いと認識しているスポーツ指導者が未だに散見されますが、コアトレーニングにおいても他のウエイトトレーニングと同様に筋肉を超回復させる期間が必要です。特にコアストレングストレーニングやコアパワートレーニングを行った場合は、48時間程度の回復期を設けましょう。 どうしても毎日コアトレーニングを行いたいのであれば、腹直筋などの屈曲筋をメインに追い込む日と腹斜筋群などの回旋筋を追い込む日、安定性のトレーニングの日と可動性のトレーニングとコアパワートレーニングの日など各トレーニングの目的を明確化する事をおススメします。 |
参考文献
1.National Academy of Sports Medicine: Essential of Sports Performance Training. Lippomcott Williams & Wikins.2009
2.Schneiders AG, Davidsson A, Hörman E, Sullivan SJ. Functional movement screen normative values in a young, active population. Int J Sports Phys Ther. 2011 Jun;6(2):75-82.
3.Shane D. Stecyk, Sean P. Flanagan, William C. Whiting. The Missing Link:Integrated Core Training. NSCA’s Performance Training Journal. Vol.7.No.6;13-16.2008
この内容はJATI Express Vol.32に掲載しております。
<前へ(ラグビー選手のためのコアトレーニング)> <次へ(競技特性に沿ったコアトレーニング)>
1.National Academy of Sports Medicine: Essential of Sports Performance Training. Lippomcott Williams & Wikins.2009
2.Schneiders AG, Davidsson A, Hörman E, Sullivan SJ. Functional movement screen normative values in a young, active population. Int J Sports Phys Ther. 2011 Jun;6(2):75-82.
3.Shane D. Stecyk, Sean P. Flanagan, William C. Whiting. The Missing Link:Integrated Core Training. NSCA’s Performance Training Journal. Vol.7.No.6;13-16.2008
この内容はJATI Express Vol.32に掲載しております。
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