ラグビーの象徴的なシーンであるスクラム時の筋活動を筋電図にて調べてみました。スクラムの姿勢だけの状態からPush動作を行うと、外腹斜筋、腹横筋、脊柱起立筋、多裂筋の筋活動が姿勢時に比べ、Push時に有意に増加する事が明らかになりました。この事はPush動作において体幹筋群が大きく貢献している事を意味し、強化の重点項目である事を示しています。また、ほぼ同じ動作姿勢で、爆発的に相手に衝突(コンタクト)するのがラグビーのディフェンスの方法であるタックルです。スクラムやタックルにおいて、地面を蹴って得られたエネルギーを、体幹部を介して効率的に相手に伝え、効果的なパフォーマンスを発揮させるには、腰椎の安定性が重要なだけでなく、コアストレングスやコアパワーなど総合的に鍛える必要があります。つまり、体幹筋群の強化はスクラムやタックルなどのコンタクトプレイの改善を手助けする事が示唆されます。
また、外国人選手と日本人選手との間で、明らかに体幹部の筋肉の付き方が異なる事を経験的に感じており、日本人と世界との差の1つであると考えています。欧米選手に比べると体格的に劣る日本人にとって、まだまだ伸び白があるフィジカル領域と言えます。従って、私の指導しているチームではストレングストレーニングの20~30%がコアトレーニングまたはそれに類似するトレーニングを行っています。
ラグビー選手のコアトレーニングにおいて、私が留意している点は、コアトレーニングの基本である正しく腰椎を安定化出来るようになる事、股関節と胸椎の柔軟性が十分に備わっている事、通常のコアトレーニングよりも高い負荷をかけてグローバル筋と言われる体幹の多関節筋を筋肥大させる事(グローバル筋の筋肥大を目的としてエキセントリック収縮を強調したエクササイズを多く用います)、競技動作と同様なスピードで爆発的に体幹筋を使うことが出来る事、競技に近い動作でコーディネーションを高める事にこだわっています。
グローバル筋の筋肥大を目的としたエクササイズ
バランスボールなど支持基底面を不安定にするとグローバル筋の筋活動が増加し、トレーニング効果が得られる事はこの連載の5回目にあたるコアストレングストレーニングに紹介しました。さらに、強度を上げるためにエキセントリック収縮を強調した種目を多く用いると効果的です。
その例としては、通販で一昔前に流行した「アブローラー」、ぶら下がり系のリバースクランチ、ハンギングアンクルタッチやドーミナーターと呼ばれる体幹回旋系のウエイトマシントレーニングが挙げられます。
ハンギングアンクルタッチ
手の幅を肩幅より少し広げて、高鉄棒やスクワットラックにぶら下がります。そこから、足首を両手の間のバーに触れるように、足を上げます。そこからゆっくりとぶら下がった姿勢まで、体幹筋群でコントロールしながら戻ります。これを10回程度繰り返すのがハンギングアンクルタッチです。
足首を右手や左手に触れるように斜めに足を上げると、腹斜筋群のトレーニングになります。非常に負荷が高く、女子選手では行う事が難しいエクササイズになりますが、グローバル筋群の筋肥大には効果的です。
ラグビーにおける競技動作に近いコアトレーニング
競技動作に類似するコアトレーニングは、主に立位で実施され、ラグビーにおいては下記に紹介するようなエクササイズが例と上げられます。
また、外国人選手と日本人選手との間で、明らかに体幹部の筋肉の付き方が異なる事を経験的に感じており、日本人と世界との差の1つであると考えています。欧米選手に比べると体格的に劣る日本人にとって、まだまだ伸び白があるフィジカル領域と言えます。従って、私の指導しているチームではストレングストレーニングの20~30%がコアトレーニングまたはそれに類似するトレーニングを行っています。
ラグビー選手のコアトレーニングにおいて、私が留意している点は、コアトレーニングの基本である正しく腰椎を安定化出来るようになる事、股関節と胸椎の柔軟性が十分に備わっている事、通常のコアトレーニングよりも高い負荷をかけてグローバル筋と言われる体幹の多関節筋を筋肥大させる事(グローバル筋の筋肥大を目的としてエキセントリック収縮を強調したエクササイズを多く用います)、競技動作と同様なスピードで爆発的に体幹筋を使うことが出来る事、競技に近い動作でコーディネーションを高める事にこだわっています。
グローバル筋の筋肥大を目的としたエクササイズ
バランスボールなど支持基底面を不安定にするとグローバル筋の筋活動が増加し、トレーニング効果が得られる事はこの連載の5回目にあたるコアストレングストレーニングに紹介しました。さらに、強度を上げるためにエキセントリック収縮を強調した種目を多く用いると効果的です。
その例としては、通販で一昔前に流行した「アブローラー」、ぶら下がり系のリバースクランチ、ハンギングアンクルタッチやドーミナーターと呼ばれる体幹回旋系のウエイトマシントレーニングが挙げられます。
ハンギングアンクルタッチ
手の幅を肩幅より少し広げて、高鉄棒やスクワットラックにぶら下がります。そこから、足首を両手の間のバーに触れるように、足を上げます。そこからゆっくりとぶら下がった姿勢まで、体幹筋群でコントロールしながら戻ります。これを10回程度繰り返すのがハンギングアンクルタッチです。
足首を右手や左手に触れるように斜めに足を上げると、腹斜筋群のトレーニングになります。非常に負荷が高く、女子選手では行う事が難しいエクササイズになりますが、グローバル筋群の筋肥大には効果的です。
ラグビーにおける競技動作に近いコアトレーニング
競技動作に類似するコアトレーニングは、主に立位で実施され、ラグビーにおいては下記に紹介するようなエクササイズが例と上げられます。
1.アスレティックポジションアイソレーション
アスレティックポジションアイソレーションはスポーツの基本姿勢であり、体幹の安定性が非常に重要です。このエクササイズはアスレティックポジションになり、パートナーに背中や肩などをあらゆる方向に押され、この際に適切に腰椎部を安定化させて、パートナーからの負荷に対して姿勢を崩さないように耐えます。臀部に力が入っていっている事を意識します。応用編として、台形のクッションであるFCBを大腿部の内側で挟み、アスレティックポジションアイソレーション行う事で、内転筋群と体幹筋群を共働させる、より機能的なエクササイズになります。このエクササイズはすべての競技おいて有効です。 |
写真2:アスレティックポジションアイソレーション
|
2.スクラムアイソレーション
スクラムアイソレーションはスクラムやタックルの基本姿勢をさらに不安定にし、より実際の動作に近づけたものです。身体は不安定なスリングまたはパートナーの手でしか支えられておらず、姿勢の維持には強力なコアが必要となります。
このエクササイズはスリングを可能な限り長くし、スリングを握りスクラムやタックルの基本姿勢になります。その際に過度に背中が反ったり・丸まったりしないよう(ニュートラルポジション)に注意しましょう。足をその場でステップしたり、実際に前に進みます。
スクラムアイソレーションはスクラムやタックルの基本姿勢をさらに不安定にし、より実際の動作に近づけたものです。身体は不安定なスリングまたはパートナーの手でしか支えられておらず、姿勢の維持には強力なコアが必要となります。
このエクササイズはスリングを可能な限り長くし、スリングを握りスクラムやタックルの基本姿勢になります。その際に過度に背中が反ったり・丸まったりしないよう(ニュートラルポジション)に注意しましょう。足をその場でステップしたり、実際に前に進みます。
また、負荷を高めるためには、パートナーにスリングを押してもらい外乱刺激を入れてもらうと、強度が上がりより効果的なエクササイズとなります。
パートナーで行う場合は、パートナーと向かい合い、片方は膝立ち・もう片方はスクラムの姿勢になり、手を握り合う。スクラムの姿勢は過度に背中が反ったり・丸まったりしないよう(ニュートラルポジション)に注意します。また、膝を出来る限り地面に近づけ、上半身は地面と平行にする。エクササイズを実施している者の肘は曲げてはいけません。この姿勢でお互いに押し合います。このエクササイズは、ラグビーなどのコンタクトスポーツに特化したエクササイズです。 その他、ラグビーに特化したコアトレーニングは、立った状態や寝た状態でボールを奪い合うボールレスリングや柔道の押さえ込み技からの脱出などの格闘技的な動きも効果的なコアトレーニングになります。また、ピラー(エルボートォー)をやっているところの首や肩にパートナーに手を置いてもらい、上でプッシュアップをしてもらうなどで首と体幹筋群を共に鍛える事が出来、効果的なエクササイズになります。 |
写真3:スクラムアイソレーション
写真4:ペアーピラー
|
スピード向上のためのコアトレーニング
体幹筋群の強化は力伝達の効率化を生むため、ランニングスピードの改善にも効果があると言われています。スプリンターのタイムと大腰筋の大きさが関係している事は広く知られており、腸腰筋群と体幹筋群のコーディネーションを高めて上げる事や下肢の高速運動時に正しく腰椎を安定化させる事が重要になってきます。そこで、スプリントの改善に特化したコアトレーニングのエクササイズをいくつか紹介したいと思います。
1.マーチング
両手を上げ、片脚の立位姿勢でコアを正しく安定化させながら(軸をぶらさずに)、脚を踏み替えます。このエクササイズが正しく出来きるようになるまで根気よく行う必要があります。正しくエクササイズを行えるようになったら、動作スピードを徐々に速くしていきましょう。マーチングについての詳細は、本連載の第3回コアスタビリティートレーニングに記載してあります。
2.腸腰筋群と腹筋群を連動させるエクササイズ
ハンギングニーアップ(ぶら下がった状態での両膝上げ)やFCB レッグレイズなどを用いて、スプリント能力と大きく関係する腸腰筋群と腹筋群を連動させてトレーニングを行えます。
体幹筋群の強化は力伝達の効率化を生むため、ランニングスピードの改善にも効果があると言われています。スプリンターのタイムと大腰筋の大きさが関係している事は広く知られており、腸腰筋群と体幹筋群のコーディネーションを高めて上げる事や下肢の高速運動時に正しく腰椎を安定化させる事が重要になってきます。そこで、スプリントの改善に特化したコアトレーニングのエクササイズをいくつか紹介したいと思います。
1.マーチング
両手を上げ、片脚の立位姿勢でコアを正しく安定化させながら(軸をぶらさずに)、脚を踏み替えます。このエクササイズが正しく出来きるようになるまで根気よく行う必要があります。正しくエクササイズを行えるようになったら、動作スピードを徐々に速くしていきましょう。マーチングについての詳細は、本連載の第3回コアスタビリティートレーニングに記載してあります。
2.腸腰筋群と腹筋群を連動させるエクササイズ
ハンギングニーアップ(ぶら下がった状態での両膝上げ)やFCB レッグレイズなどを用いて、スプリント能力と大きく関係する腸腰筋群と腹筋群を連動させてトレーニングを行えます。
まとめ
基本的なコアトレーニングのエクササイズを正しく行えるようになった上で、競技特性に即したコアトレーニングを行うと動きの質、スピード、力強さなどの改善が見受けられます。1つのアクセントとして、競技特性に即したコアトレーニングを導入してみてください。
今まで、この連載で紹介してきたように、コアトレーニングも系統的に取り組む事でパフォーマンス向上や傷害予防に繋がります。ピラー(エルボートォー)などの安定性向上エクササイズ、シットアップやクランチに偏らずに、系統的でチャレンジングなコアトレーニングを実施していってください。
この内容はJATI Express Vol.33に掲載しております。
参考文献
1. 大塚潔. ラグビーのためのコアストレングストレーニング.ラグビー科学研究.2008;19[3],17-24.ISSN 1881-8420
<前へ(コアパワートレーニング)>
基本的なコアトレーニングのエクササイズを正しく行えるようになった上で、競技特性に即したコアトレーニングを行うと動きの質、スピード、力強さなどの改善が見受けられます。1つのアクセントとして、競技特性に即したコアトレーニングを導入してみてください。
今まで、この連載で紹介してきたように、コアトレーニングも系統的に取り組む事でパフォーマンス向上や傷害予防に繋がります。ピラー(エルボートォー)などの安定性向上エクササイズ、シットアップやクランチに偏らずに、系統的でチャレンジングなコアトレーニングを実施していってください。
この内容はJATI Express Vol.33に掲載しております。
参考文献
1. 大塚潔. ラグビーのためのコアストレングストレーニング.ラグビー科学研究.2008;19[3],17-24.ISSN 1881-8420
<前へ(コアパワートレーニング)>