コアストレングストレーニング
コアスタビリティートレーニングでは腹横筋などのローカル筋を収縮させて、いかに腰椎の安定化をさせるかという話をしてきました。しかし、コアスタビリティートレーニングだけではある程度のパフォーマンス向上しか期待出来ません。その理由として、コアスタビリティートレーニングにおいて筋活動が増すローカル筋の多くは単関節筋で、筋の長さも短く、発揮出来る力(トルク)は限られています。従って、体幹筋群においてもより大きな力(トルク)を発揮させるにはより筋の長い多関節筋であるグローバル筋の筋活動を増し、発揮する力(トルク)を増す必要があります。
グローバル筋は、他の筋と同様に筋のサイズが筋力に大きく関係するため、筋肥大が筋力増加に不可欠です。グローバル筋は多関節筋であるため、安定性が求められる腰椎だけでなく、上下の胸椎と股関節の可動性にも関与しています。従って、グローバル筋によって発生される力(トルク)は胸椎で起こる体幹動きや股関節の動きの基であり、スポーツ動作において重要な役割を果たしています。
グローバル筋は、他の筋と同様に筋のサイズが筋力に大きく関係するため、筋肥大が筋力増加に不可欠です。グローバル筋は多関節筋であるため、安定性が求められる腰椎だけでなく、上下の胸椎と股関節の可動性にも関与しています。従って、グローバル筋によって発生される力(トルク)は胸椎で起こる体幹動きや股関節の動きの基であり、スポーツ動作において重要な役割を果たしています。
コアストレングストレーニングの特徴
コアストレングストレーニングの特徴は、腰椎と胸椎のすべての可動域にわたってコンセントリック収縮とエキセントリック収縮の両筋収縮様式を用いてよりダイナミックにトレーニングを行う事です1)。コアスタビリティートレーニングのほとんどが、アイソメトリック収縮でトレーニングを行う事と比べると、コアストレングストレーニングはより動きのあるトレーニングになります。
従来の腹筋トレーニングで行われてきたクランチ、ツイストクランチやシットアップなどは、コアストレングストレーニングに分類されます。加えて、前回紹介した研究結果からわかるように、バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にする事でもグローバル筋の筋活動が増加するため、これらのトレーニングもコアストレングストレーニングになります。
コアストレングストレーニングの具体的な方法は、可能な限り大きな可動域で、6回以上を複数セット(3~6セット)行います。負荷は、まずは自体重から始めて、その後バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にしたり、プレイトやダンベルを用いて高めます。
上体起こしの動作だけでなく、プレイトをなどの重りを用いた回旋系のトレーニングも効果的なコアストレングストレーニングなります。その例として、体幹を回旋させながらプレイトを斜めに上げ下げを繰り返す「プレイトダイアゴナルレイズ」やランジをしながらプレイトを左右に動かす「ランジ&プレイトローテーション」なども非常に効果的で負荷の高いコアストレングストレーニングになります。
従来の腹筋トレーニングで行われてきたクランチ、ツイストクランチやシットアップなどは、コアストレングストレーニングに分類されます。加えて、前回紹介した研究結果からわかるように、バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にする事でもグローバル筋の筋活動が増加するため、これらのトレーニングもコアストレングストレーニングになります。
コアストレングストレーニングの具体的な方法は、可能な限り大きな可動域で、6回以上を複数セット(3~6セット)行います。負荷は、まずは自体重から始めて、その後バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にしたり、プレイトやダンベルを用いて高めます。
上体起こしの動作だけでなく、プレイトをなどの重りを用いた回旋系のトレーニングも効果的なコアストレングストレーニングなります。その例として、体幹を回旋させながらプレイトを斜めに上げ下げを繰り返す「プレイトダイアゴナルレイズ」やランジをしながらプレイトを左右に動かす「ランジ&プレイトローテーション」なども非常に効果的で負荷の高いコアストレングストレーニングになります。
スポーツ動作におけるコアの役割
ほとんどのスポーツ動作は四肢の加速と減速を自在に操って実現します。その中心となるのがコアであり、足で得た地面反力を筋、筋膜や骨を介して上肢や下肢へ伝播する運動連鎖はコアを中心に構成されています。投球を例にすると、足を踏み込み、その後体幹を側屈と回旋させて、上肢を加速させます(図2)。
効率的で安全な力の伝達は、解剖学的にニュートラル位で基本的には行われるため、そのポジションを維持するためにも腰椎の安定化が重要になり、コアスタビリティートレーニングが基本となります。
図2:投球時の体幹の役割
効率的で安全な力の伝達は、解剖学的にニュートラル位で基本的には行われるため、そのポジションを維持するためにも腰椎の安定化が重要になり、コアスタビリティートレーニングが基本となります。
図2:投球時の体幹の役割
パフォーマンス向上に直結させるコアストレングストレーニング
広く実施されているコアトレーニングの多くは腹筋群のみを対象として、鍛えており、その上下の筋や運動連鎖にまで考慮したトレーニングはほとんど行われていないと思います。
解剖学的に見てみると、長内転筋と腹直筋は互いの筋線維が混じって共通腱膜を形成し,恥骨に付着するなど2)、骨盤帯や脊柱においてコアトレーニングの対象となる筋は他の筋と骨や筋膜などを通じて繋がっています。これらの筋と連動や協働させてトレーニングを行うと、実際の動作と類似するためパフォーマンス向上に直結します。
解剖学的に見てみると、長内転筋と腹直筋は互いの筋線維が混じって共通腱膜を形成し,恥骨に付着するなど2)、骨盤帯や脊柱においてコアトレーニングの対象となる筋は他の筋と骨や筋膜などを通じて繋がっています。これらの筋と連動や協働させてトレーニングを行うと、実際の動作と類似するためパフォーマンス向上に直結します。
Functional Condition Box (FCB)トレーニング
FCBはFunctional Condition Boxといい、筆者が開発に携わった多用途に使用できるコンディショニングツールで、台形をしたクッションです(図3)。
FCBの形は、スポーツのパワー発揮の基本姿勢(パワーポジション)の股関節の角度を由来としています。
FCBを用いる事で、今までは鍛えにくかった下腹部や股関節内転筋群・内旋筋群の強化を実現し、新感覚なトレーニング負荷と効果を得られます。バランスボールとは違い面で負荷をかけられるため、股関節の内転だけでなく、内旋させる事も出来、内転と内旋の複合的なトレーニング姿勢が可能になります。これは、股関節の回旋運動を伴う多くの動作(ステップやジャンプ、アジリティ、スウィングやバッティング、投球、投げ技や格闘技、コンタクトプレイなど)を行う多くの種目において、競技特性に即したトレーニングが可能になります。また、下腹部の筋と股関節内転筋群・内旋筋群が同時に働くので、骨盤底筋群も連動して収縮を起こし、尿失禁などの骨盤帯の不定愁訴の改善にも期待されます。内転筋群のサイズはスプリントスピードと関係していると言われています3)。内転筋はトレーニングをしづらい筋であり、機能不全などでグローインペイン症候群などの慢性障害の原因となる事の多い筋です。現状ではトレーニングの方法も限られており、他の筋と協働して鍛える効果的な方法は今までありませんでした。しかし、FCBを用いる事で内転筋群と腹筋群を連動および協働させてトレーニングを行う事が可能になります。このように運動連鎖に沿ったトレーニングを実践することで、パフォーマンス向上に直結します。
トレーニング負荷としてのFCB
筋電図にてFCBを用いたシットアップとノーマルのシットアップの筋活動を比較すると、腹直筋の筋活動量はFCBを使うと1.3~1.5倍に増加、外腹斜筋の筋活動量はFCBを使うとおよそ2倍に増加、内転筋群の筋活動量の増加は4倍以上、その他FCBを使うと脚の筋の筋活動も増加するため、脚にFCBを挟むという行為が新たな負荷となる事が明らかとなっています。従って、FCBを実際の指導現場で応用するとFCBはより高負荷の体幹筋トレーニングのツールとなります。
FCBの形は、スポーツのパワー発揮の基本姿勢(パワーポジション)の股関節の角度を由来としています。
FCBを用いる事で、今までは鍛えにくかった下腹部や股関節内転筋群・内旋筋群の強化を実現し、新感覚なトレーニング負荷と効果を得られます。バランスボールとは違い面で負荷をかけられるため、股関節の内転だけでなく、内旋させる事も出来、内転と内旋の複合的なトレーニング姿勢が可能になります。これは、股関節の回旋運動を伴う多くの動作(ステップやジャンプ、アジリティ、スウィングやバッティング、投球、投げ技や格闘技、コンタクトプレイなど)を行う多くの種目において、競技特性に即したトレーニングが可能になります。また、下腹部の筋と股関節内転筋群・内旋筋群が同時に働くので、骨盤底筋群も連動して収縮を起こし、尿失禁などの骨盤帯の不定愁訴の改善にも期待されます。内転筋群のサイズはスプリントスピードと関係していると言われています3)。内転筋はトレーニングをしづらい筋であり、機能不全などでグローインペイン症候群などの慢性障害の原因となる事の多い筋です。現状ではトレーニングの方法も限られており、他の筋と協働して鍛える効果的な方法は今までありませんでした。しかし、FCBを用いる事で内転筋群と腹筋群を連動および協働させてトレーニングを行う事が可能になります。このように運動連鎖に沿ったトレーニングを実践することで、パフォーマンス向上に直結します。
トレーニング負荷としてのFCB
筋電図にてFCBを用いたシットアップとノーマルのシットアップの筋活動を比較すると、腹直筋の筋活動量はFCBを使うと1.3~1.5倍に増加、外腹斜筋の筋活動量はFCBを使うとおよそ2倍に増加、内転筋群の筋活動量の増加は4倍以上、その他FCBを使うと脚の筋の筋活動も増加するため、脚にFCBを挟むという行為が新たな負荷となる事が明らかとなっています。従って、FCBを実際の指導現場で応用するとFCBはより高負荷の体幹筋トレーニングのツールとなります。
FCBを用いたコアストレングストレーニング
開始姿勢はFCBを膝から大腿部で挟み、股関節屈曲30度にして仰向けに寝ます。それから、両膝でFCBをつぶす様に内転、内旋させながら、上体を3秒間かけて起こします、その姿勢を3秒間保ち、3秒間かけて開始姿勢に戻ります。回数は8~12回程度を3~5セット繰り返します。
身体を捻りなら起こす(ツイストシットアップ)事で、腹斜筋群を選択的に鍛える事も出来ます(普通にシットアップをするだけでも、腹斜筋群の筋活動はかなり得られます)。
図4:FCBシットアップ
身体を捻りなら起こす(ツイストシットアップ)事で、腹斜筋群を選択的に鍛える事も出来ます(普通にシットアップをするだけでも、腹斜筋群の筋活動はかなり得られます)。
図4:FCBシットアップ
FCB レッグレイズ
開始姿勢はFCBを膝から大腿部で挟み、股関節屈曲30度にして仰向けに寝ます。それから、両膝でFCBをつぶす様に内転、内旋させながら、脚を3秒間かけて拳上します。その姿勢を3秒間保ち、3秒間かけて開始姿勢に戻ります。回数は8~12回程度を3~5セット繰り返します。下腹部および腸腰筋群のトレーニングとして効果的です。
また、脚を斜めに上げる(ツイストレッグレイズ)事で、腹斜筋群を選択的に鍛える事も出来ます。
図5:FCBレッグレイズ
また、脚を斜めに上げる(ツイストレッグレイズ)事で、腹斜筋群を選択的に鍛える事も出来ます。
図5:FCBレッグレイズ
FCBパワーポジション&トランクローテーション
開始姿勢はFCBを膝から大腿部で挟み立ち上がります。両膝でFCBをつぶす様に内転筋群、内旋筋群を使いながら、FCBが落ちないように保ちます。そして、腕を伸展した状態で胸椎を左右に回旋させます。その際、背中が丸まらないように注意し、腹筋に力を入れ続けます。回数は 8~12回程度を1~3セット繰り返します。負荷は何も持たない自体重から開始して、必要に応じた重さのプレイトを用います。ゴルフやバッティングの飛距離向上、ブレない体幹を作る、軸の安定に最適です。
まとめ
・コアストレングストレーニングは、腰椎と胸椎のすべての可動域にわたってコンセントリック収縮とエキセントリック収縮の両筋収縮様式を用いてダイナミックにトレーニングを行う事。その代表例はクランチなどです。
・バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にしたり、プレイトやダンベルを用いる事で負荷を増す事が出来ます。
・FCBを脚で挟みながらコアトレーニングを行うと、腹筋群や内転筋群の筋活動が増加するため、新たな負荷と効果を生みます。また、運動連鎖に沿ったトレーニングが出来、パフォーマンス向上に繋がります。
この内容はJATI Express Vol.31に掲載しております。
参考文献
1.National Academy of Sports Medicine: Essential of Sports Performance Training. Lippomcott Williams&Wikins.2009
2. Omar IM, Zoga AC, Kavanagh EC, Koulouris G, Bergin D, Gopez AG, Morrison WB, Meyers WC. Athletic pubalgia and "sports hernia": optimal MR imaging technique and findings. Radiographics.28(5):1415-38, 2008
3.永書俊彦,丸山敦夫,稲木光晴,日高正八郎,池田耕治.短距離選手における下肢筋容積とパフォーマンスの関係. 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編.51:73-81, 2000
・バランスボールなどを用いて支持基底面を不安定にしたり、プレイトやダンベルを用いる事で負荷を増す事が出来ます。
・FCBを脚で挟みながらコアトレーニングを行うと、腹筋群や内転筋群の筋活動が増加するため、新たな負荷と効果を生みます。また、運動連鎖に沿ったトレーニングが出来、パフォーマンス向上に繋がります。
この内容はJATI Express Vol.31に掲載しております。
参考文献
1.National Academy of Sports Medicine: Essential of Sports Performance Training. Lippomcott Williams&Wikins.2009
2. Omar IM, Zoga AC, Kavanagh EC, Koulouris G, Bergin D, Gopez AG, Morrison WB, Meyers WC. Athletic pubalgia and "sports hernia": optimal MR imaging technique and findings. Radiographics.28(5):1415-38, 2008
3.永書俊彦,丸山敦夫,稲木光晴,日高正八郎,池田耕治.短距離選手における下肢筋容積とパフォーマンスの関係. 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編.51:73-81, 2000