コアスタビリティートレーニング2(応用編:各エクササイズの本質に迫る)
パフォーマンス向上トレーニングやフィットネスシーンで図1のようなコアスタビリティートレーニングが腰椎の安定化(これはローカル筋の分節的安定化、グローバル筋とローカル筋の相互作用による体幹全体の安定化、腰椎骨盤帯の安定化です)を目的として、多く実践されています。しかし、各種目で筋活動特性まで理解し、それを考慮してトレーニング処方をしている事は少ないかと思います。今回は、いくつかの研究を紹介しながら、コアスタビリティートレーニングの筋活動特性や強度について説明したいと思います。
図1:代表的なコアスタビリティートレーニング(文献3より引用)
コアスタビリティートレーニングの筋活動特性と強度
もっとも基本的なコアスタビリティートレーニングは両手足を地面につけた状態で、正しくコアアクティベーション(詳細は前回の連載を参考にしてください)をして、適切な姿勢を一定時間(通常は1~2分)保つ事です。その代表的な種目がエルボートォー(ブリッジ)、ハンドニー(バードドッグ)やサイドブリッジなどです(図1-1、1-6、1-9)。
先行研究によると、腹臥位(四つばい位、腕立ての姿勢(ブリッジ))などでは腹直筋、腹斜筋群の筋活動が増加し、背臥位(バックブリッジ)などでは脊柱起立筋群など背筋群の筋活動が増加し、側臥位(サイドブリッジ)などでは下側の腹斜筋群の筋活動が増加する事が明らかになっています(文献1,2)。しかし、これらの研究は表面筋電図での報告がほとんどであり、体幹深部筋である腹横筋の正しい評価がされていない状態でしたので、図1に示した11種類の体幹筋トレーニング中の筋活動を深部筋の中に直接筋電図を挿入するワイヤ筋電図も用いて、私が所属する研究グループで調べてみました(文献3)。
その結果、基本的なコアスタビリティートレーニングに手や足、または手足を上げる事で体幹筋の筋活動が増加するため、手や足、または手足を上げる事はトレーニング強度で上げる有効な方法になります。
特に腰椎の安定化に大きく貢献する腹横筋の筋活動に注目してみるとエルボートォー(ブリッジ)の片手片足挙げ(図1-2、1-3)において、手で支えている側が他の種目と比べ有意な腹横筋の筋活動の増加が認めらました(図2)。従って、腹横筋をトレーニング対象としてトレーニング処方するならば、まず一般的なコアスタビリティートレーニングであるエルボートォー(ブリッジ)が容易に出来るようになり、その後手足を拳上し難易度を上げる事で腹横筋の筋活動もさらに増加し、さらなるトレーニング効果が期待されます。また、サイドブリッジの下側の腹横筋の筋活動も増加傾向が確認されていますので、コアアクティベーションを正しく行ったうえでのサイドブリッジも腹横筋の強化および腰椎の安定性を強化する種目として活用すべきものだと考えられます。
先行研究によると、腹臥位(四つばい位、腕立ての姿勢(ブリッジ))などでは腹直筋、腹斜筋群の筋活動が増加し、背臥位(バックブリッジ)などでは脊柱起立筋群など背筋群の筋活動が増加し、側臥位(サイドブリッジ)などでは下側の腹斜筋群の筋活動が増加する事が明らかになっています(文献1,2)。しかし、これらの研究は表面筋電図での報告がほとんどであり、体幹深部筋である腹横筋の正しい評価がされていない状態でしたので、図1に示した11種類の体幹筋トレーニング中の筋活動を深部筋の中に直接筋電図を挿入するワイヤ筋電図も用いて、私が所属する研究グループで調べてみました(文献3)。
その結果、基本的なコアスタビリティートレーニングに手や足、または手足を上げる事で体幹筋の筋活動が増加するため、手や足、または手足を上げる事はトレーニング強度で上げる有効な方法になります。
特に腰椎の安定化に大きく貢献する腹横筋の筋活動に注目してみるとエルボートォー(ブリッジ)の片手片足挙げ(図1-2、1-3)において、手で支えている側が他の種目と比べ有意な腹横筋の筋活動の増加が認めらました(図2)。従って、腹横筋をトレーニング対象としてトレーニング処方するならば、まず一般的なコアスタビリティートレーニングであるエルボートォー(ブリッジ)が容易に出来るようになり、その後手足を拳上し難易度を上げる事で腹横筋の筋活動もさらに増加し、さらなるトレーニング効果が期待されます。また、サイドブリッジの下側の腹横筋の筋活動も増加傾向が確認されていますので、コアアクティベーションを正しく行ったうえでのサイドブリッジも腹横筋の強化および腰椎の安定性を強化する種目として活用すべきものだと考えられます。
図2:代表的なコアスタビリティートレーニングを行った際の腹横筋の筋活動(文献3より引用)
その他の筋の各種目における筋活動特性を見ていくと、背部の体幹深部筋である多裂筋はバッグブリッジ足挙げ(図1-7、1-8)で、脚を拳上している側の多裂筋の筋活動が有意に増加する事がわかりました。腹直筋はシットアップ(図1-11)で最も筋活動が増加しました。外腹斜筋はエルボートォー(ブリッジ)の片手片足挙げ(図1-2、1-3)とサイドブリッジ(図1-9、1-10)で筋活動が有意に増加しました。このように、広く行われているコアスタビリティートレーニングの種目は、それぞれ筋活動が増加する筋が異なるため、目的を明確化する必要があります。
その他の筋の各種目における筋活動特性を見ていくと、背部の体幹深部筋である多裂筋はバッグブリッジ足挙げ(図1-7、1-8)で、脚を拳上している側の多裂筋の筋活動が有意に増加する事がわかりました。腹直筋はシットアップ(図1-11)で最も筋活動が増加しました。外腹斜筋はエルボートォー(ブリッジ)の片手片足挙げ(図1-2、1-3)とサイドブリッジ(図1-9、1-10)で筋活動が有意に増加しました。このように、広く行われているコアスタビリティートレーニングの種目は、それぞれ筋活動が増加する筋が異なるため、目的を明確化する必要があります。
コアスタビリティートレーニングで支持基底面を不安定にするとどうなるか?
トレーニング指導者やコーチがよくやるコアスタビリティートレーニングの負荷増加の方法としてバランスボールやBOSUなどを用いて、支持基底面を不安定にする事がよくあるかと思います。
図3に示した5種類の体幹筋トレーニングにおいて支持基底面が安定している場合とバランスボールなどを用いて不安定にした場合の筋活動も深部筋の中に直接筋電図を挿入するワイヤ筋電図も用いて、私が所属する研究グループで調べてみました(文献4)。
その結果、エルボートォー(ブリッジ)にバランスボールをプラスすると(図3-A)、身体の表層にあるグローバル筋であるの腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋の筋活動が有意に増加します。また、ハンドニー(バードドッグ)においても同じような傾向の筋活動の増加が認められます(図4)。グラフには載せていませんが、シットアップ(図3-E)においてもBOSUを加えると事で腹直筋と外腹斜筋の筋活動が増加するため、これらの筋のより強度の高いトレーニングの方法として有効であると思われます。
図3:バランスボールなどを使用したコアスタビリティートレーニング(文献4より引用)
図3に示した5種類の体幹筋トレーニングにおいて支持基底面が安定している場合とバランスボールなどを用いて不安定にした場合の筋活動も深部筋の中に直接筋電図を挿入するワイヤ筋電図も用いて、私が所属する研究グループで調べてみました(文献4)。
その結果、エルボートォー(ブリッジ)にバランスボールをプラスすると(図3-A)、身体の表層にあるグローバル筋であるの腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋の筋活動が有意に増加します。また、ハンドニー(バードドッグ)においても同じような傾向の筋活動の増加が認められます(図4)。グラフには載せていませんが、シットアップ(図3-E)においてもBOSUを加えると事で腹直筋と外腹斜筋の筋活動が増加するため、これらの筋のより強度の高いトレーニングの方法として有効であると思われます。
図3:バランスボールなどを使用したコアスタビリティートレーニング(文献4より引用)
図4:支持基底面を不安定にした時のコアスタビリティートレーニングの筋活動
支持基底面をバランスボールやBOSUを使用して不安定にすると体幹深部にあるローカル筋の筋活動が増加すると考えていたが多くいらっしゃったと思いますが、実際は異なり、不安定なコアスタビリティートレーニングは、腰椎の安定化というより体幹の表層にあるグローバル筋の腹直筋、外腹斜筋と脊柱起立筋の強化に向いている事がわかりました。
支持基底面をバランスボールやBOSUを使用して不安定にすると体幹深部にあるローカル筋の筋活動が増加すると考えていたが多くいらっしゃったと思いますが、実際は異なり、不安定なコアスタビリティートレーニングは、腰椎の安定化というより体幹の表層にあるグローバル筋の腹直筋、外腹斜筋と脊柱起立筋の強化に向いている事がわかりました。
高強度なコアスタビリティートレーニング
今まで紹介した研究を踏まえ、手や足を挙上して、さらに回旋動作や他の部位を連動させて動かす事で、さらに高強度なコアスタビリティートレーニングを行う事が出来ます。その例としてエルボートォー(ブリッジ)with FCB、クロコダイル、3Dダイナミックコアブリッジなどがあります。
エルボートォー(ブリッジ)with FCB
FCBはFunctional Condition Boxといい、筆者が開発に携わった多用途に使用できるコンディショニングツールで、台形をしたクッションです。FCBを脚で挟む事で股関節内転内旋とコアの連動性と協調性する事が出来、効果的なトレーニングが可能になります。詳しくは次回以降に紹介します。
FCBを膝から大腿部遠位で挟み、コアアクティベーションを正しく行い、腕立て伏せの姿勢になります(この際、パートナーにFCBを押さえてもらうと挟みやすくなります)。それから、両膝でFCBをつぶす様に内転筋を使いながら、脚から肩まで一直線になるように保ちます。基本的なコアスタビリティートレーニングと同様に30秒~1分キープします。それを2-5セット行います。
FCBを膝から大腿部遠位で挟み、コアアクティベーションを正しく行い、腕立て伏せの姿勢になります(この際、パートナーにFCBを押さえてもらうと挟みやすくなります)。それから、両膝でFCBをつぶす様に内転筋を使いながら、脚から肩まで一直線になるように保ちます。基本的なコアスタビリティートレーニングと同様に30秒~1分キープします。それを2-5セット行います。
クロコダイル
コアアクティベーションを正しく行い、腕立て伏せの姿勢になります。腕立て伏せをしながら、片側の足を拳上し股関節を外転させ、沈み込んだ位置で3秒静止する。そして開始姿勢に戻ります。これを繰り返します。各サイド8-12回、2-5セット行います。膝を屈曲させる事で、難易度を下げる事が出来ます。
3Dダイナミックコアブリッジ
コアアクティベーションを正しく行い、サイドブリッジの姿勢になります。下側の足を挙げ腰椎部を固定したままクロスモーションを使って全身を写真のように捻ります。そして開始姿勢に戻ります。これを繰り返します。各サイド8-12回、2-5セット行います。
まとめ
1. コアスタビリティートレーニングにおいて、正しく基本姿勢(エルボートォー(ブリッジ)やサイドブリッジ)が容易に出来るようなったら、手足を拳上し難易度を上げることで特に体幹深部筋(腹横筋や多裂筋)の筋活動も増加し、トレーニング効果が期待されます。
2. バランスボールやBOSUなど支持基底面を不安定にすると、身体の表層にあるグローバル筋の筋活動が有意に増加します。従って、腰椎の安定化という効果より腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋などの筋肥大や筋力の増加に効果があると考えられます。
3. 手や足を挙上して、さらに回旋動作や他の部位を連動させて動かす事で、さらに高強度なコアスタビリティートレーニングが出来きます。その例として、エルボートォー(ブリッジ)with FCB、クロコダイル、3Dダイナミックコアブリッジなどがあります。
この内容はJATI Express Vol.30に掲載しております。
参考文献
1. Ekstrom RA, Donatelli RA, Carp KC. Electromyographic analysis of core trunk, hip, and thigh muscles during 9 rehabilitation exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37:754-762.
2. Escamilla RF, McTaggart MS, Fricklas EJ, et al. An electromyographic analysis of commercial and common abdominal exercises: implications for rehabilitation and training. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36:45-57.
3. Okubo Y, Kaneoka K, Imai A, Shiina I, Tatsumura M, Izumi S, Miyakawa S. Electromyographic analysis of transversus abdominis and lumbar multifidus using wire electrodes during lumbar stabilization exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 40:743-50,2010
4. Imai A, Kaneoka K,Yu Okubo, Itsuo Shiina, Masaki Tatsumura, Shigeki Izumi, Hitoshi Shiraki Trunk. Muscle Activity During Lumbar Stabilization Exercises on Both a Stable and Unstable Surface. J Orthop Sports Phys Ther.40:369-375, 2010
2. バランスボールやBOSUなど支持基底面を不安定にすると、身体の表層にあるグローバル筋の筋活動が有意に増加します。従って、腰椎の安定化という効果より腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋などの筋肥大や筋力の増加に効果があると考えられます。
3. 手や足を挙上して、さらに回旋動作や他の部位を連動させて動かす事で、さらに高強度なコアスタビリティートレーニングが出来きます。その例として、エルボートォー(ブリッジ)with FCB、クロコダイル、3Dダイナミックコアブリッジなどがあります。
この内容はJATI Express Vol.30に掲載しております。
参考文献
1. Ekstrom RA, Donatelli RA, Carp KC. Electromyographic analysis of core trunk, hip, and thigh muscles during 9 rehabilitation exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37:754-762.
2. Escamilla RF, McTaggart MS, Fricklas EJ, et al. An electromyographic analysis of commercial and common abdominal exercises: implications for rehabilitation and training. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36:45-57.
3. Okubo Y, Kaneoka K, Imai A, Shiina I, Tatsumura M, Izumi S, Miyakawa S. Electromyographic analysis of transversus abdominis and lumbar multifidus using wire electrodes during lumbar stabilization exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 40:743-50,2010
4. Imai A, Kaneoka K,Yu Okubo, Itsuo Shiina, Masaki Tatsumura, Shigeki Izumi, Hitoshi Shiraki Trunk. Muscle Activity During Lumbar Stabilization Exercises on Both a Stable and Unstable Surface. J Orthop Sports Phys Ther.40:369-375, 2010